今さらラマダンのことを共有するのもなんだか気が引けますが、私にとっては非常に思い出深い体験だったのでここに残しておきたい。
ラマダンとはイスラム教徒の義務の1つである約30日間断食をする期間である。断食期間が日の出前から日没後まで飲食を一切禁止する。この行動をムスリムが行うことで、貧しい人への理解とムスリムの共同体をさらに強くさせる期間である。以下の記事でも簡単に書いた。
この時の私は断食をしない予定でしたので、朝食だけ友達家族と別々に食べていました。(ムスリムは4時起床、はむぞの9時起床)しかしながら、ラマダン開始後いきなり1人で朝食を食べるのが急に寂しくなり(うさぎか)、元々歯の矯正の都合上間食が出来ずプチ断食みたいなことをしていた。せっかくだから朝早く起きて友達家族と一緒に断食をやって、自分の身体と心にどんな影響が与えられるのか、ムスリムの日常に少しお邪魔させてもらうことになり、ラマダン開始4日目から参加することにした。
ラマダンはコーランの原語アラビア語なのだが、私はトルコ目線で書きたいのと思いますので、以下トルコ語ラマザンで統一したいと思う。
また、私は断食ビギナーかつ服用する薬の都合上日中でも水分を摂取していました。でもいつもより断食中の水分摂取量はかなり少なめ、友達家族の前では絶対水は飲まなかった。もちろんムスリム以外の人は断食する義務はありません。
以下断食日記スタートです。
午前4時過ぎ、起床。


2度寝して朝食を逃したくないので、すかさずキッチンへGO。朝食の準備をします。お湯を沸騰させてチャイを煮出す。ゆで卵も茹でてスープやパンを温める。普段朝食でスープは飲まないんですが、ラマザン期間中は胃がデリケートなのでスープを飲んでから朝食を頂くみたいです。
午前5時 朝食を食べる
眠いけどここでちゃんと食べないと後々後悔するのでよく食べます。


まずスープから頂いて、その後オリーブやトマトなどの副菜、そしてトースト。もちろんチャイも一緒に。食後にはバナナ。腹もちに良いから食べる。正直にいうと寝起きでパンは少しきつくて、飲み込むのが大変でした( ̄▽ ̄;)温かいうどんや蕎麦だったなぁと日本食が急に恋しくなる。でもでも、1人で朝ごはんを食べていた時よりマシ。みんなで食べる方が美味しい。そしてまもなく断食スタートなので、水を飲むことを意識します。
午前5時半 お祈りをするための呼びかけエザーンがモスクから流れると断食がスタート。エザーンが流れ始めた瞬間から一切の飲食が禁止されます。
午前6時 片付け終わってぼんやりYOUTUBE見たり編み物をする。
午前7時過ぎ そろそろ空が明るくなってきたところでもう1回寝る。
満腹で寝るの最高に罪悪感あるけど、気持ちいいんだよなぁ。
午前10時半過ぎ トイレのために目覚める。
ベッドの上でゴロゴロしたり、少し仕事したり。2度寝から起きた感じなので、寝起きがスッキリしているという訳ではない。
午前11時半あたり リビングに集合
友達と家族で体調の確認をし合う。家族とは些細なことでも共有します。よく眠れたとか、胃が少し痛むとか、頭が痛いとか。私は夕食まで後7時間もあるのかー暇だなーって思いながらぼーっとしています。笑
午後1時過ぎ この日はパザール(市場)に向かいます。






買い物は時間があっという間に過ぎるので楽しいですねー。ただおしゃべりしながら買い物するから喉が乾きまくるし、何より頭が動かない。笑 この時期の買い物はラマザン後の祝日バイラムの時に着る服や使う小物を探したり、食料品だとチョコレートやキャンディが多く出回る時期。(バイラムでは大人が近所の子供にチョコレートやキャンディを渡す習慣があります)バイラムに向けて世間の購買意欲が高まるので、価格設定は高め傾向にあるらしい。
ラマザンになると、この時期でしかみられない食材の数々。見ているだけでも楽しい。
ムハンマドが「断食明けに積極的に食べなさい。」と言っていたようで
ムスリムにとって大切な食べ物の1つになっている。
午後4時あたり 帰宅
断食中のエネルギー消耗は早い。身体全体が疲れて何もしたくない状態になるのでここは一旦仮眠する。
ちなみにパザール行かない日は、部屋の掃除とか公園でお散歩したり。ただ体力の消耗が激しいので、普段通りの生活はなかなか出来ない。
午後5時半過ぎ ゆっくり夕食の準備
お腹空きすぎて記憶飛ぶ。日没のお祈り後に断食が明けるので、その時間までにちまちま調理の準備をします。ちなみに日没のお祈り時間は毎日1分以上変わるので、こまめにインターネットで時間を確認します。


料理していると作業に集中できるから、時間があっという間に過ぎる。それと同時に、お腹パラメーター限界値になり、食材の香りが漂うキッチンに立つのが時々辛くなる。笑
午後7時 断食明けまでもう少し。
祈りの時間が近づくと、一気にスープやごはんを温め、テーブルに準備します。
午後7時半 日没のお祈りエザーンが流れる
断食が明ける。
「Allah kabul etsin」神様が受け入れてくれますように
と一言添えてから、まず最初に水をゆっくり飲んで、それからスープを飲み、サラダやメインディッシュを食べます。断食明けはホッとするのか、自然と笑顔が溢れる。




んんんもうううう本当にご飯美味しい。いつもより美味しく感じるかもしれない。やっとご飯食べれたという喜びでいっぱい。でもあれだけお腹空いていたのに、意外とすぐお腹いっぱいになっちゃう。12時間以上も空腹期間を空けてからの食事は、流石に胃への負担も大きいのかもしれない。( ̄▽ ̄;) 私はお腹を壊すことはなかったけど、たまに友達やトルコのお母さんが胃痛で悩まされていた。断食は身体のデトックスって言うけど、結構体の負担は大きいのかなと感じる。日本食だったらもっとトルコ料理より油が少ないから、健康的な断食ができるのかなーなんて思ったりも。
夕食後は怒涛のチャイラッシュが始まる。トルコの方々は普段1日何回もチャイを飲むので断食期間中はチャイが飲めないのが1番辛いみたいです。笑



ちなみにラマザン期間中だけ行うお祈りがあり(タラウィーの礼拝 トルコ語Teravih namaz)、今回のラマザンでは夜大体9時以降に行います。そのお祈りが済むと一通り1日が終わります。断食って聞くと、難しくて修行のイメージが強い方も多いと思いますが、行うことは意外とシンプルだと思いますね。
もし体調が悪くなったり、風邪をひいて断食が厳しかったら中断しても大丈夫ですが、多くのムスリムは続行するらしいです。(実際お父さんが咳き込んで辛そうだったけど断食してた)小さな子供や女性の生理期間、入院していて断食が困難な人も断食の対象ではありません。基本的に健康なムスリムが行うようです。
断食の目的の1つは、貧しいムスリムへの理解を身で感じるということ。私は幼少期に両親が離婚して、目に見えるくらい急に貧しい家庭になったがそれでも毎日食べ物や飲み物はあったし母が必ず用意してくれた。でも世の中には食べ物を食べれなかったり水1滴すら飲めない人たちもいると思うと断食することで、喉が渇いてもどかしい気持ちも分かる。実際に体験することは、初めて相手の立場になって考えられるということか。
私はいつでもご飯や飲み物が摂取できる環境で育ち現に今もその生活、なんならこだわり強くてその先の「美味しさ」の追求をしているが、それすらもすでにかなりの贅沢だと気付きました。(ここまでの文は断食中に書いていて、今もなお断食中で腹ペコリーナだが、断食後に当たり前にご飯があることも忘れてはならない)
約30日間のラマザンの後は、国民の祝日「バイラム」です。3日間続きます。この時期のイスタンブールやカッパドキアなどの観光地、地方都市では帰省により激混みします。笑
バイラム期間では、家族や親戚のお家に行ってみんなでご飯食べたり、チャイを飲みながら談笑したりします。基本的には目上の人に挨拶にしにいくみたいなので、おじいちゃんおばあちゃん家に行く感覚。日本のお盆に近いかな?
1日目はトルコのお父さんのお兄さん家族の家にお邪魔させてもらい、一緒に朝食をいただきました。
もうね普段からトルコの朝食って、テーブルにパーっと料理が並べてあってすごく綺麗なのに、バイラムになると更に豪華さが増す。器やカラトリー、さらにはテーブルクロスまで!食事メニューがありすぎて迷っていると、速攻トルコのお母さんたちから「はむぞの!いいから食べなさい!」とツッコミをいただく。待ってくれ、いま選んでるんだが。笑
そのあとは家に帰り少し休んだあと、私は友達と2人で海辺に出かけたり、翌日は友達の妹家族が遊びに来て一緒に食事を楽しみました。たまに家にお父さんの友達や親戚も訪れてなんだか賑やかでした。(ちょっと疲れた)私の家族は親戚で集まることはコロナ以降一度もなく、うちも復活させてもいいのかなって思ったりもした。
バイラムではトルコの極上スイーツバクラヴァを食べたり、トルコの母の愛を感じられる料理サルマを食べたりして楽しかった。驚いたのは、ムスリムの方々はすごく暖かく迎え入れてくれる方が多い。私はただの日本から来た外国人で、かつイスラム教のことについて知ったばかりなのに、私が断食したとムスリムの人たちに伝えるとめちゃくちゃ感激されて、ありがたいお言葉をたくさん頂いた。トルコでの家族愛の強さは前々から感じていたけど、ここまで繋がりが強いとは思わなかった。日本から1歩踏み出してみると、本当に未知の体験だらけで生きることについて考えさせられる。
※次回のラマザンは2026年2月17日から。